Roland Jupiter-8 解説

20世紀の音楽シーンは、Wurlitzer, Rhodes を始めとする様々な電子楽器により支えられてきました。その中でも、Roland が 1981 年に発売した Jupiter-8 は日本が産み出した最高傑作のひとつに数えるべきでしょう。本記事では、そんな Jupiter-8 についてゆるゆると解説したいと思います。


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時代背景…

大容量サンプラーが当たり前となった今日では想像もつかないことですが、1980 年頃の電子楽器最大の課題は同時発音数でした。ちなみに本機の同時発音数は 8 です。
ちなみに、この同時発音数の問題は、20 世紀の終わりごろまでついて回ることになります。
たとえば、1991 年発売、GM 規格の標準音源として有名な Roland SC-55mkII は 16 パート、同時発音数 28 でした。したがって、常に発音数を気にしておく必要がありました。

当時、発音数で世界を圧倒的にリードしていたのはヤマハでした。同時に複数の音が鳴らせるポリフォニック・シンセサイザーを実用化したのはヤマハでしたし、Jupiter-8 と同時代に発売された DX7 は同時発音数 16 と、両手で押さえきれない(!)数の音を同時に鳴らすことができました。

構造

Jupiter-8 はアナログシンセです。つまり、電子回路を物理的に発振させて音を作り、フィルター回路等で加工をしていきます。発振回路のことをオシレーターと呼びます。
パネル上のほぼ全てのスイッチの値はメモリー上に記録されており、64種類のプリセットを保存することが可能。これも当時としてはかなり画期的な仕掛けだった。
鍵盤は 61 鍵。

拡大写真: Roland Jupiter-8 Synth, 1983

上段
  • ロゴ下
    • VOLUME
    • BALANCE (LOWER - UPPER)
    • ARPEGGIO
      • RATE
      • INT / EXT
  • LFO
    • RATE, DELAY TIME, WAVE FORM のスイッチが見えます。大体想像の通りです。WAVE FORM ツマミで RANDOM が選択できるようです。
  • VCO MODULATOR
    • (・ω・)…
  • VCO-1
  • VCO-2
    • VCO-1, 2 から VCA まで、細い横線が引かれています。この順で回路をとおる?
    • SOURCE MIX と書かれたダイアルが付いています。オシレータの信号を好きなバランスで混ぜられるということでしょうか。
  • HPF
    • ハイパスフィルターを通るようです。カットオフ周波数しかありません。なんとも豪快です。
  • VCF
    • フィルター回路は、VCF (Voltage-controlled filter) と VCA (Voltage-controlled amplifier) の二種類の回路で構成されています。VCF では、カットオフ周波数を操作します。
    • レゾナンスは設定できそうです。
  • VCA
    • VCA では、音量を操作します。LFO 信号を入力して、わんわんと音量を上げ下げすることができます。
  • ENV-1
  • ENV-2
下段
  • MASTER TUNE
  • TUNE
  • ARPEGGIO
    • 1 / 2 / 3 / 4 / UP / DOWN / U&D / RANDOM
  • ASSIGN MODE
    • SOLO / UNISON / POLY (1) / POLY (2)
  • HOLD
    • LOWER / UPPER
  • KEY MODE
    • DUAL / SPLIT / WHOLE
  • PANEL MODE
    • LOWER / UPPER
  • PATCH NUMBER
    • LOWER / UPPER
    • 画面中央に四桁のディスプレイがあります。鍵盤の上下で別々の音色が使えるようです。
  • PATCH NUMBER 11-88
    • 1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7 / 8 / MANUAL
  • PATCH PRESET
    • A / B / C / D / E / F / G / H / MEMORY PROTECT / WRITE
  • TAPE MEMORY
    • SAVE / VERIFY / LOAD / DATA CHECK
    • このスイッチがなんとも時代を感じさせます。
鍵盤横

VCO とか LFO とかのスイッチがたくさんあります。

音色

甘く透き通るような音色が特徴的です。非常に日本的な音だとおもいます。
ハイがしなしなとしていて中低音がもやっとした出音には、ローランドの原点が垣間見えます。
それにしてもサインリード好きな会社ですね。

中段のみ Jupiter-8。他の鍵盤はジュピターではないので注意。


プリセットが色々聴けます。パッドやエレピ、ストリングの音など、これだけの回路の割にかなり色々な音が鳴ります。やはり高音は伸びません。


LFO 横に 2 つ LED ぽい何かがあります。これ光るのね…
それにしてもこの外人ノリノリである